吉本佳生『スタバではグランデを買え!』
グランデのラテを買ったみたいな、満足感のある本だった。
高校生のころに読んでいたら、うっかり経済学部を目指していたかもしれない。
経済学や商学をちゃんと勉強している人には今更感はあるかもしれないけど…。
概要
スタバではグランデ(ショートサイズの2倍)を買った方が、客・販売者双方に利益をもたららすワケとは…?
タイトルの事例を始め、
・ペットボトルのお茶はコンビニで買うよりスーパーで買うほうが本当にお得?
・携帯料金が複雑なワケ
・家電量販店が隣り合って出店されるのはなぜ
・子育て医療費無料の弊害
・100円ショップの安さが成り立つ理由
etc…
あらゆる角度から、値段がどう決まるのかが、学べるコスパの良い1冊!
感想
☆ペットボトルのお茶は、お茶以外にもお金を払っている!
普段は98円で売られるお茶をスーパーで買う人が、150円のお茶を自販機で買うケースについて
安ければいいってものじゃなくて、お茶以外に対してもお金を払っているんだよなと感じた。
地下鉄の駅のすぐ近くにある便利なスーパーなので、レジがそれなりに混むことも知っています。
いつもなら98円のお茶をスーパー内で買うのですが、3分後の地下鉄に乗ろうと急いでいる今日は、自動販売機で150円で買いました
そう、1本のお茶のためにスーパーのレジで5分~10分使うと考えたら、150円が割高とは思えない場合もある。
電車の時間が迫っているこの例にしても、お茶だけじゃなく時間も買っているんだよね。
よくある節約術としてはコンビニはNG,スーパー推奨なんだろうけれど…。
あと、ペットボトルを買うことで、荷物の軽量化や、お茶を淹れる手間も買うと書いてあったのも、納得。
確かに極力水筒は持ち歩きたくないんだよな。荷物が増えるから。
夏場なんてリットル単位で水を摂取するのに、何本も水筒を持ち歩きたくないし。
節約術的にはやはり水筒推奨なんだろうけれど、時間や労力も軽視したくないよなぁ。
☆子どもの医療費無料化によって、破壊されること
個人的に非常に興味深かったのが、この項目。
無料化が引き起こすモラルハザードに、経済的利益の逸失!
子どもの医療費を無料にすることで、不要不急の受診が増えて、急を要する子どもの受診が遅れるリスクは想像がついた。
で、さらに混雑により、待ち時間が増え、隠れた所得格差の増大…という視点はなかった。
極端な例だけど、旦那さんがいいところに勤めていて、奥さんが専業主婦。あるいは年金暮らしのばあばと二世帯住宅という家庭。
専業主婦の母や、年金暮らしの祖母が子どもを連れて待つ時間は、(あえて賃労働という観点で)時給0円。
3時間診察室で待っても、0円×3時間=0円。
一方、もし時給2000円のシングルマザーが病院で3時間待機したら、6,000円。
実際は3時間キッカリとはいかず、
薬局で薬を処方してもらう時間に通院の時間も必要だし
半日なり1日なり仕事を休まないといけないから、積もり積もった経済的損失はバカにならない‥!
こうして労働時間を失い、所得格差が増大する、と知ると、こわいな。
また、医者にとっても「不要不急の患者」は大してお金にならない、むしろ負担が増える制度とのこと。
子どもの医療費無料でもこういう弊害があるなら、
もし今だに、老人の医療費無料という時代が続いていたらと考えると、ぞっとするわ。
ほんとこの制度、せいぜい未就学児までとか、小学生以上は入院のみでもいい気がするよ。
「子育て」ってある意味聖域だから反対しづらい気もするけど…。
☆携帯料金が複雑なワケ
携帯電話の料金体系がわかりにくいのは、
「複雑なパズルを解けた人だけ安くするよ」って仕組みかと思っていた。
あれだ、税金や社会保障と一緒だ。
…と。その予想も当たってはいたんだけど、それだけではなかった。
一時期同じキャリアどうしなら安くなるとか、特定の相手に関して通話料は無料というサービスが各携帯会社で打ち出されていたけれど。
通話料金が安くなるほど「不要不急の通話」は増える。
一方、仕事の話など必要な通話は、多少料金が高くてもやむを得ず通話料を払う。
と、「急ぎではない通話」を安くして、客を取り込むというビジネスモデルが面白かった。
結構いろんな考え方から携帯料金って決まっているのね…!
10年前に書かれた本なので、ウィルコムとか懐かしい単語が出てきたけどw
こちらの本には書かれていないけど、格安SIMも、なぜ安いか考えるとやはり値段って無駄についていない気がするな。
そして、「お金がないない」という人に限って
「格安SIMってよくわからないし、携帯会社を変えるのも面倒くさいんだよね」ってそのままにしている気がする…
偏見だけども。
☆スタバはグランデを売れ!で儲かるのかな?
タイトルのテーマについては。1杯あたりにかかるコスト、人件費を考えたら、2回ショートサイズを売るより1回グランデを売ったほうがお得ということ。
まぁだいたい想像どおり。
ただ、疑問があって
ショートサイズで30分で退席してくれる客と、
グランデで2時間粘る客がいた場合、お店にとって本当に利益をもたらす客はどちらなんだろう?
滞在時間が長くなれば、ドリンクやフードのオーダーを追加してくれるのであれば後者だろうけれど。
立地条件にもよるのかねぇ。
テイクアウトだったらそりゃグランデだけど。
まとめ
10年以上前に出されたので、やや古い部分もありつつ。
モノの値段の決まり方を考えるキッカケとして面白かった。
おすすめ本
山田真哉『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?~身近な疑問からはじめる会計学~』
この本が楽しめる人なら、ぜひ。
森博嗣『お金の減らし方』
自分は何にお金を払っているのか?何に価値を感じているのか?
自分軸に徹したお金の使い方を考える。
錦野 宇志郎『「スタバが怖い! 」がわからない人はマーケッターをやめなさい!! 』
スタバ繋がり。スタバで何が売られているのか考えてみると…。
さすがにスタバラテのグランデサイズ…とはいかないけど、
この本も、ごてごてのフラペチーノくらいの値段では、読めると思う。(2020年7月現在)
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