姫野桂『発達障害グレーゾーン』診断がおりないゆえの生きづらさとは。

姫野桂『発達障害グレーゾーン』診断がおりないゆえの生きづらさとは。

「病気や障害って、診断名がつかないにこしたことないよね!」

とつい思ってしまうんだけれど。

「(障害と)診断されないゆえの苦しみ」についてあまり想像したことがなかった。

「発達障害グレーゾーン」という切り口で、「生きづらさ」について考えてしまう本だった。

と、書くくらいには生きづらさ満載で生きております。てへ。

1.概要

正式に診断が降りたわけではないけれど、発達障害の傾向がある「グレーゾーン」の人たち(以下、「グレさん」)をテーマにした本。

診断がおりないことで「甘えじゃないか」という葛藤が生まれる。

でも、努力をしているのに、なかなか「普通」の人のようにうまくいかない…。

ありそうでなかった「診断が降りないゆえの、生きづらさ」

また「普通」に擬態するために、すり減る様子は、自己肯定感が低い人共通のあるあるだと思う。

心身を壊すまで努力してしまったり、幸せへのブレーキを踏んで恋愛を遠ざける、など…。

当事者だけではなく、当事者会の主催者や医者、支援グループなどにインタビューを行い、様々な視点から「発達障害グレーゾーン」 について知ることができる1冊。

2.感想

(1)誰がためのカミングアウトか

グレさんたちの当事者会を主催している方のお話が、最も印象的だった。

発達障害の傾向があることを、職場や周りに打ち明けるか問題で。

打ち明けて「じゃあ会社にどうしてもらいたいの?」ということです

それね。打ち明けた本人は、何かしら肩の荷がおりるのかもしれないが…。

自分が社員が売上を出さないとすぐに潰れてしまうような会社の社長だったとしましょう。

そんなある日、社員からいきなり「社長、私は発達障害があってツラいんです。わかってください!」とだけ言われたらどう思うでしょうか?

その社員には給料を支払っているのに成績が悪くお客様からもクレームがくる。

それなのに、原因は発達障害だからと理解を求められるわけです。

このたとえ話がわかりやすくて、好き。

家庭の事情なり病気なりで、自分が追い詰められていると「私は事情があるんだから配慮してよ!」という気持ちがどこか出てしまいそう…反省。

自分に何ができて何ができないか、打ち明けられた側に立って考えましょうというスタンスが良かった。

「生きづらい生きづらい!配慮しろ」と一方的な主張をするんじゃなくて、

自分の置かれた状況を客観的に見ようね!と建設的な考え方だな。

この本を読んで感じたのが、行きつくところは「生きづらさとどう折り合いをつけるか」なのかなぁと…(あくまでも個人的な感想。)

そのうちのひとつとして「わかってわかって」の前に「相手のことをわかろうとする」って必要なスキルだ。

(2)低空飛行の自己肯定感と、失った健康や恋愛。

当事者へのインタビューで特に共感したのが、自己肯定感の低さからくる生きづらさ。

自己肯定感が低すぎて、心身を壊すまで頑張るわ、恋愛は心を開けないわ…私自身もとにかく生きづらいのだ。

なんとかボロが出ないようにって集中しているから、それが年単位で蓄積されてストレス過多になり、その結果、体を壊しそうになったり、メンタル面がボロボロになる。

という当事者の話が自分に重なった。

自己肯定感が低くて、身体もメンタルもボロボロになるまで努力するって身につまされる。

他人事として読んでいると、別に発達障害関係なく、他の人もボロを出しているんじゃないかと思うけど。(それでも、どうにかなっていると。)

自分のこととなると、人より頑張って人並になれるかどうか、というくらい自己肯定感が低いのだ。

私自身、上司に良い評価をいただいたときですら「いつまでハリボテをかぶって誤魔化せるのだろう」と不安になったくらいだ。

書いていると自己肯定感低いな!自分で自分が面倒くさい。

また、この方が職場の人に対しても

「必死で自分の弱いところを隠して毎日挑んでいるから、ボロが出たりとか、(自分の能力が低いことが)バレてしまわないかって病んでくるんですよね。」

と警戒心を持つのもわかるし。

正直自己肯定感が高くないと、自分のことを大切に扱えない気がする。

 「私=私にとって価値が低い存在」なら、ボコボコにしても傷つけても何ともかまわないというか。

 「私なんか」からくる過剰な努力は、ゆるやかな自傷行為なんだろうなぁ。

(私だって、自覚はしているんだぜ。)

さらに発達障害を理由に婚約破棄をされた女性の話が衝撃だった。

「発達障害傾向があると、『私には女性としての価値があるのだろうか』という不安が常にあるため、自分が幸せになることに対してブレーキがかかっているように思います。

デートに誘われてうれしいのに、なぜか返事をしなかったり、荷物を持ってあげると言われたのに断ってしまったり。

自信のなさからくる「幸せになることへのブレーキ」も、昔の自分を見ているようだ。

私自身も「待てこれは孔明の罠だ」とばかりに疑ったり、好きな相手に試し行動をずいぶん繰り出したもんだ…。

(その節は、関係者の方々に失礼いたしました。えへ。)

自己肯定感が低い人が恋愛をすることは、とても難しいみたいです。

本当に。石橋を叩いて壊しちまうぜ。

この方のケースも、自己肯定感が高ければ、「元婚約者とご縁はなかったのは悲しい。でも、私の魅力とは別。」とわけて考えられたのだろうか?とも思ったり。

自己肯定感があまりにも低いと、自分の不安にばかり目が行くからな。

別に今も自己肯定感は高くないけど、昔はもっと低かったなぁ。

これも他人事として読むと、「自己肯定感が低くて、うまくいくことも悲観的に捉える癖があるな」と気づけた面もあるけれど。

 一方、自己肯定感が高そうな人は、選択と集中ができている。

最後にインタビューされた男性で「仕事さえできれば、電気やガスがとまってもOK」と割り切った考え方が元気づけられるわ。

この男性は自分のことよく分かっているなと感じた。

3.まとめ

「生きづらさ」と折り合いをつけるには、自分ができることを探していくことかなぁ。

月並みの感想だけど。

あとは自己評価をマイナスからゼロに近づけて、生きづらさを増幅させない。

別に「普通」じゃなくていいんだよ、生きづらささえなければ…。

ふと、「他人が押し付ける『普通』なんて自分の都合のいい部分を寄せ集めたに過ぎない」って言葉を思いだしたよ。

この本もおすすめ

(1)姫野桂 『「発達障害かも?」という人のための「生きづらさ」解消ライフハック』

当事者たちから集めたライフハック集。

別に発達障害に限らず、今日は生理痛が重くて頭が働かないなぁとか風邪気味だなぁとか、調子が悪い日は誰しもあると思う。

読みやすいし「調子が悪いときでもやりすごす」ために、おすすめ。

リスクヘッジ!

(2)借金玉『発達障害サバイバルガイド――「あたりまえ」がやれない僕らがどうにか生きていくコツ47』

自称「日本一意識の低い自己啓発本作家」が書く、意識が低い自己啓発本。

意志の力に頼らないライフハック。

借金玉さんの文章が面白いので、普通に読み物としても楽しい。

自己肯定感も意識も低いままでもできることを。

(3)八木 仁平『 世界一やさしい「やりたいこと」の見つけ方 人生のモヤモヤから解放される自己理解メソッド』

自己肯定感を高めるには、やはり自己理解がひとつの手段だと思う。

コンビニバイトが勤まらなかった、でも他にできることがあるよね!というやぎぺーさんのスタンスが好き。

(4)田村麻美『ブスのマーケティング戦略』

自己理解も大事だけど、自分を活かせる市場を見つけるのも大事だよね!

こちらも読み物としても面白い。