新型コロナウイルスを予見!?高嶋哲夫『首都感染』

新型コロナウイルスを予見!?高嶋哲夫『首都感染』

コロナウイルスがこわくて、休日は家でパンデミック小説を読んでいたり。

カミュの「ペスト」でも読もうかと思ったが、時代と舞台となる土地がちょっと、離れているし…

2020年2月現在、武漢発の新型肺炎(コロナウイルス)流行のニュースに触発されて読んだ本について、書きます。

このタイミングで読むと、コロナウイルスを予見したかのような小説に思える。

高嶋哲夫『首都感染』

(本編に入る前に…「外出自粛中の今こそ、楽しめること」について、こちらもご参照ください。)

1.概要

中国発の、新種のウイルスに、人が次々と感染していく。

内臓出血を伴い、人が、バッタバッタ死んでいくのだけれど、中国当局は、国の威信をかけて、情報統制を行っている。

タイミングが悪いことに、中国がワールドカップの開催地に選ばれ、世界中からサポーターが訪問していて…。

特にお隣の国、つまり我らが日本人も、中国に乗り込んでいる。

新型ウイルス蔓延が判明し、日本は水際作戦を展開するが、それでも東京で、ウイルスが蔓延してしまう。
思い切って、東京そのものを封鎖するという…!

2.感想(コロナウイルス関連のニュースと比べた感想)

①検疫拒否

「明日から仕事なんだよ。母親が病気だって嘘ついて休暇をとってるんだ。ばれたら首になるよ。」
「俺だって店閉めて来てるんだ。休業期間の保証はしてくれるのか」
(中略)
「感染してなかったらどうするんだ。保障は出るのか。」

高嶋哲夫「首都感染」

あら、武漢からの帰国者で、検疫を拒否して帰宅した人が、ニュースになっていたような。

自営業かなにかで、拒否したのかな?と思っていたんだけど…。

きっとこんな感じのやりとりをしていたんだろうな,と容易に想像がつく。

この物語では、ワールドカップ観戦と「遊びに」行った人たちが多くて、現状、武漢から帰国した人は、たぶんビジネスマンが多いんだろうけれど…。

個人的には、この検疫拒否のシーンが、現実のニュースと重なってとても不気味だった。

独裁国だったら、強権を発動してどこかに幽閉されるだろうし、そもそも独裁国なら自国民を助けてくれないだろうけれど…。

②世界に先駆け、中国シャットダウン!

いやぁ、世界に先駆けて、日本が、中国からの渡航者を拒否!

中国への宣戦布告だの、世界中に非難されながらも、「ウイルスを日本に持ち込ませない」と、日本政府が、毅然と対応する。

世界に遅れて、ようやく湖北省滞在歴のある人を拒否し出した現状の日本と、かなり違うね。

正直、武漢からの帰国者を厳重に隔離しているわりには、中国から来日した人に、甘すぎる気がして。

これも官僚に、科学に詳しい人が少ないという日本のお国柄もあるのか。

あとはまぁ、経済的に中国頼みの部分が多いんだろうな、だから思い切った手段を取れないんだろうなぁとも感じた。

とはいえ、東南アジア某国よりはマシだけど。

☆コロナと東南アジア雑感☆
もっと中国に経済を頼り切った、東南某国が、こちら。
自国民に「武漢から帰ってくるな!」と国のトップが発言しているからね。

https://news.livedoor.com/article/detail/17764232/

https://blogos.com/article/433953


「現地に残れ、恐怖心が病」だとか、入国拒否どころか「私がマスクを必要としていない以上誰もマスクなど必要ないのだ」とまぁ、ほんと独裁者って非論理的w

フィリピンやシンガポールとえらい違いで。

やっぱり東南アジアってひとくくりにできないなぁ、と、コロナウイルス一連の報道で感じたわ。

パンデミックで感じる国の力関係…。

③東京封鎖

人口が1,100万人の大都市武漢を封鎖する、と中国はやはり、やることが大胆だ。
武漢が封鎖されたニュースを見ながらも、「もし自分が封鎖されたら」と妄想せずにはいられない…恐怖。

で、この小説は、東京が封鎖されてしまう!

東京を脱出する人には、国家権力が武力行使をするシーンが、今の武漢封鎖の報道と重なったし(きっともっと凄まじいのだろうが‥)

突然の封鎖により、近隣の県から通勤している人が、突然家に帰れなくなってしまったシーンが特に日本らしいな、とリアリティがあった。

埼玉・神奈川・千葉あたりから通勤している人が多いからな…ということは、都内でウイルスが蔓延したら、満員電車とともに、近県に持ち帰っているのか。あぁこわい。

うーん、たしかに都市をまるっと、封鎖するのは効果的なんだろうなぁ。

そして、同じ日本国内でも、封鎖された東京と、地方の温度差が残念だった…。

武漢を封鎖、本当に中国は思い切ったことをやるね。

しかし、この記事を読むと、封鎖された都市から自国民を救出するって、大変なことだなぁと感じる。

https://www.nhk.or.jp/politics/articles/feature/29765.html

封鎖する側にとっちゃ、たしかに外国人が逃げだしたら、混乱を招くから望ましくないよなぁ。

3.パンデミックは、周期的に。

序盤は、コロナウイルス発生を予見していたのか?と思うほど、現状と重ねて読んでしまった。

でも、途中から「もし日本がこんな政策(毅然と渡航者を拒否するだとか)をとっていたら」と妄想が膨らんでしまう。

で、ウイルスを駆逐する薬を、人類が開発したところで、またウイルスも生き延びるために変幻する。

あぁ、パンデミックって周期的に起こるだなぁと、マスクは備蓄品に加えないとなぁと感じた…。
科学に弱い私でも、ウイルスの知識がわかりやすかった。

でも、こんなパンデミックなんて小説の中だけで、いい。

いたちごっこだろうが、早くワクチンが開発されてほしい。

一刻も早く終息して、武漢周辺の人が、全人類が、助かりますように。

【追記】

と、殊勝な台詞で締めてら……

これを読んだ当時は、正直対岸の火事のように感じていたけど。

今や明日は我が身。

【追記その2】

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200324/k10012348071000.html

小池知事が、首都封鎖について言及。

リアル首都感染だ…..

そのうち、埼玉県民以外も通行手形が必要になるのかしら。