五十嵐貴久『愛してるって言えなくたって』ビールとともに飲み込むキモチ
- 2020.09.01
- 小説 読書
- ビール, 五十嵐貴久, 愛してるって言えなくたって

タイトルから、あまあま‥胸やけしそう、なお話を連想していたけれど。
甘味もあるし、しっかり苦い、
フルーティーなビールを飲んでいる気分になった。
読んだら、ビールを飲みたくなるので、
先にお気に入りのビールを調達してから、本を開くのがお勧め。
(発泡酒じゃなくて、ちゃんとしたビールね。)
もちろん、山下達郎のあの歌も聴きたくなる。笑
1.概要
門倉友広は、ビール会社の管理職。
退職の穴埋めに、社内異動や中途採用で、一気に部下が2人入ってきた。
なんだか放っておけないアイツ、あれ!?
俺、妻も、娘もいる身なのに!
この気持ちは…。
感想(★ネタバレあり)
(1)文学好きはワクワクする、各章のネーミング。
「銀の匙」、「みだれ髪」「高慢と偏見」など、
それぞれの章のタイトルが、文学作品で統一されていて。
目次を眺めるだけで、ワクワクしてきた。
いや、これらの作品も、全部読んでいないんだけど。
(読書は好きだけど、私はガチガチの文学畑ではないのだ…)
主人公も、恋のお相手も読書好きという設定も、共感できて楽しかった。
出会いはあの有名なアニメ作品を彷彿とさせたし…。
どんなジャンルの本を読みたいか、どういう酒が飲みたいか、それはその日の気分による。
あぁ、あるある。
「とりあえずビール」というけれど、
さっさと濃厚な赤ワインにうつりたかったり、
ちょっと甘い黒糖焼酎という気分の日もあるし、
たまには地ビールを軽くひっかけたい、なんていうときもある。
読書だって、法律とか金融とか、堅苦しい本を読みたいときもあれば、
軽いエンタメ系という気分のときもあるからなぁ。
さらに、
書店でも飲み屋でも、その時の気分が優先されるが、時には書店が熱心に推す本を買うこともある。
バーテンが勧めた酒を飲むことがあるが、それと同じだ。
乗っかってみるのも、ひとつの楽しみで、合わなければ別の何かに返ればいい。
そうそう、この乗っかってみるのも面白い。
これも、乗っかりたい気分と、
自分が興味をもった作家・分野に猪突猛進の気分のときと、波があるなぁ。
読書好きなら共感できるポイントが、ちょこちょこ挟まっていてよかった。
(2)ビールの営業が面白かった
飲食店相手に、ビールを営業する描写が、一番面白かった。
特に主人公が、それなりの規模の受注が取れるかどうか、という瀬戸際で、
がっつかないところ。
あぁ、目先の数字じゃなくて、長いスパンで、いろんな角度から見ていて、
かっこいいなと。
恋愛小説で、本筋じゃないんだけどね…。
(1)でいうなら、いまの本選びは、まさにマーケティングの気分だから…。
★(3)もしやとは思ったが、恋の相手は…
表紙を見て、もしやとは思ったが。
やっぱりそうきたか、まさかの男性が、男性に恋をする話。
新しい。
いや、違う、著者は、とある作品で、同性愛のネタを書いていた。
(1)の文学作品はもちろん、武者小路実篤も出しながらも、
作中に、三島由紀夫『仮面の告白』が出てこないのは、あえて???
まとめ
たぶん、本って読む時期によって響く箇所がちがって・・・
恋愛に悩んでいたら、きっともっと、
恋に悩む心理描写の引用が増えていたと思うんだけど。
ビールの営業が面白い、という、
まさにマーケティングが気になる時期に読んだような感想だ。
酒も本もその時の気分を大事にしようぜ!
あぁビールが飲みたくなったよ。ざんねん。
お酒×本なら、この記事も。
ひらめいて、同時に書いた別記事。
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