五十嵐貴久『愛してるって言えなくたって』ビールとともに飲み込むキモチ

五十嵐貴久『愛してるって言えなくたって』ビールとともに飲み込むキモチ

タイトルから、あまあま‥胸やけしそう、なお話を連想していたけれど。

甘味もあるし、しっかり苦い、

フルーティーなビールを飲んでいる気分になった。

読んだら、ビールを飲みたくなるので、

先にお気に入りのビールを調達してから、本を開くのがお勧め。

(発泡酒じゃなくて、ちゃんとしたビールね。)

もちろん、山下達郎のあの歌も聴きたくなる。笑

1.概要

門倉友広は、ビール会社の管理職。

退職の穴埋めに、社内異動や中途採用で、一気に部下が2人入ってきた。

なんだか放っておけないアイツ、あれ!?

俺、妻も、娘もいる身なのに!

この気持ちは…。

感想(★ネタバレあり)

(1)文学好きはワクワクする、各章のネーミング。

「銀の匙」「みだれ髪」「高慢と偏見」など、

それぞれの章のタイトルが、文学作品で統一されていて。

目次を眺めるだけで、ワクワクしてきた。

いや、これらの作品も、全部読んでいないんだけど。

(読書は好きだけど、私はガチガチの文学畑ではないのだ…)

主人公も、恋のお相手も読書好きという設定も、共感できて楽しかった。

出会いはあの有名なアニメ作品を彷彿とさせたし…。

どんなジャンルの本を読みたいか、どういう酒が飲みたいか、それはその日の気分による。

あぁ、あるある。

「とりあえずビール」というけれど、

さっさと濃厚な赤ワインにうつりたかったり、

ちょっと甘い黒糖焼酎という気分の日もあるし、

たまには地ビールを軽くひっかけたい、なんていうときもある。

読書だって、法律とか金融とか、堅苦しい本を読みたいときもあれば、

軽いエンタメ系という気分のときもあるからなぁ。

さらに、

書店でも飲み屋でも、その時の気分が優先されるが、時には書店が熱心に推す本を買うこともある。

バーテンが勧めた酒を飲むことがあるが、それと同じだ。

乗っかってみるのも、ひとつの楽しみで、合わなければ別の何かに返ればいい。

そうそう、この乗っかってみるのも面白い。

これも、乗っかりたい気分と、

自分が興味をもった作家・分野に猪突猛進の気分のときと、波があるなぁ。

読書好きなら共感できるポイントが、ちょこちょこ挟まっていてよかった。

(2)ビールの営業が面白かった

飲食店相手に、ビールを営業する描写が、一番面白かった。

特に主人公が、それなりの規模の受注が取れるかどうか、という瀬戸際で、

がっつかないところ。

あぁ、目先の数字じゃなくて、長いスパンで、いろんな角度から見ていて、

かっこいいなと。

恋愛小説で、本筋じゃないんだけどね…。

(1)でいうなら、いまの本選びは、まさにマーケティングの気分だから…。

しばらく、知的好奇心をマーケティングに振り切ります、

★(3)もしやとは思ったが、恋の相手は…

表紙を見て、もしやとは思ったが。

やっぱりそうきたか、まさかの男性が、男性に恋をする

新しい。

いや、違う、著者は、とある作品で、同性愛のネタを書いていた。

(1)の文学作品はもちろん、武者小路実篤も出しながらも、

作中に、三島由紀夫『仮面の告白』が出てこないのは、あえて???

まとめ

たぶん、本って読む時期によって響く箇所がちがって・・・

恋愛に悩んでいたら、きっともっと、

恋に悩む心理描写の引用が増えていたと思うんだけど。

ビールの営業が面白い、という、

まさにマーケティングが気になる時期に読んだような感想だ。

酒も本もその時の気分を大事にしようぜ!

あぁビールが飲みたくなったよ。ざんねん。

お酒×本なら、この記事も。

恋愛のモヤモヤはビールで流そう。ていうか残業はやめよう。

ひらめいて、同時に書いた別記事。