酒井順子『ギャルに小判』~ギャルじゃないから大判がほしい~

酒井順子『ギャルに小判』~ギャルじゃないから大判がほしい~

恋愛話をしてもおカネの話って友達としないよね・・・と。
昔は、女性が「自分で」稼いだり使ったり、を覚える前に、結婚して旦那さんの稼ぎでやりくりしていたというのにね。
女性(「ギャル」)とおカネのハナシ。

「かせぐ」「つかう」「けちる」「ふやす」の四本立て。

タイトルに「ギャル」という言葉がふくまれているとおり(?)、1990年代後半に出版された本です。

感想

1.かせぐ

他人の稼いだお金で生活する女性(金持ちマダム)と、自分の食い扶持を自分で稼ぎたいという女性。
この手の二項対立は、著者の他の作品でも存分に出てくる気がする・・・。

著者同様、私も後者だ。

時々、「他人のお金を使える女性」とか「専業主婦」のほうがイージーモードでは?。
たいして稼げる才覚もないくせに、何でこんな無理しているんだろう・・・と弱るけれど、逆を選んでもきっと、息苦しそうだよね。
(こういう、あえての二項対立から、負け犬と勝ち犬が生まれたんだなぁ。わぉん。)

2.つかう

海外旅行で円高の勢いに乗って、ふと気づいたら円安になっている・・・レートが変わっているじゃん、という話がすき。
確かに外国のお金って、まごう事なき「貨幣」なんだけど、「こども銀行のオモチャのような感じがしてしまう」というのも、非常によくわかる。だから金銭感覚が狂うのよね。

あと、個人的には、高校生で「原稿料が10万円振り込まれた」という話が格好よすぎて、さすが酒井さんだなぁと。
(こういうエピソードが印象に残るということは、金目になる才能がほしい・・・って欲があるんだね。)

3.けちる

バブル期の彼女にとっては、「不況」を、非日常と書くあたりが興味深かった。

たしかに「不況がつらい」といえるうちは、あまり悲壮感がないものかもしれない。

物心ついたころから「不況」と言われ続けたからなぁ。

そのわりになんとか食いつないで生きてしまっているので、私もあまり「不況」なのかどうか、よくわからない。

4.ふやす

習い事は「自己投資」……という甘い名目。

確かに女性は習い事がすきなイメージ。

最近はだいぶ資格試験に変わっているのだろうが……。

お料理やら着付けやら習っても、1年後も同じ仕事をしている女性の話が、なんだか考えさせられる。

成長株を、どこかで売却して利益を確定させるように、結局、「自己投資」を目一杯回収するには、人生のどこかでリスクを取らないといけないらしい。

ただ、株を売却しなくても・・・それこそ「へっへーやっぱりダウは年7%成長するね。低金利時代、預金だけじゃコワいよね」と株を保有しているだけでも、逃げ道があると信じられて、精神衛生上、よろしい。

生計はたてられなくても、いざとなったらお小遣い稼ぎ程度にはなる「特技」「資格」があると、精神衛生上逃げ道としていいんだろうなぁ。

料理もお花も書道も、脱走したくなるほど苦手なので、せめて文章を書けるようになって、自己肯定感を今の金利よりは上げたいぜ・・。